バイクに乗っていないときでもできるトレーニング 2

hiko流、片足立ちバランストレーニングについて解説します。
対象となるレベルは、特に限定しません。


なお、このトレーニングはNBレベルの私が実証中の段階ですので、以下に記す効果が必ず期待できるとは限りませんし、なんらかのデメリットを伴う可能性もあります。その旨ご理解の上、お試しの場合はあくまで自己責任でお願いします。


<レベル1>
片足で立ちます。そして、浮かせている方の足首の甲側を、立ち足のふくらはぎ〜アキレス腱のあたりにあてがう感じで軽くからめます。
こうすることで、浮かせている足でバランス取りができないようにします。
両腕は腕組みをして、こちらもバランス取りに使えないようにします。
ふらついたときに、ケンケンするのは禁止です。あくまで足裏の範囲だけでバランスをキープし続けるのです。


この姿勢で1分以上、バランスを保ち続けることが、どちらの足でもできるようになることが最初の目標です。


<レベル2>
ふらつきがほとんどなくなり、楽にバランスを保てるようになってきたら、バランス取り以外の事を考えながら1分以上続けられる事を目指します。また、上下左右に首を動かしてみたり、会話もできればなお良いです。とにかく片足でバランスを取っていることすら忘れてしまう位、どちらの足でも自然に続けられるようになることが目標です。


上記のトレーニングを続けていると、からだの重心線が足裏の範囲を逸脱しないように保つだけで精一杯だったのが、やがてあまり頑張らなくても立ち続けられるようになり、そして仕事の事やトライアルの事など考えながら、楽に片足立ちが続くようになるという、進歩の手応えがハッキリと分かります。
私もこれを始めて2年目でなんとか「無意識立ち」ができるようになりつつあります。
この「無意識立ち」ができるようになってきた頃から、セクション内でのスタンディングも安定感がグッと増してきました。


上記が基本のパターンです。
そして、以下の「片足立ちトレーニングのバリエーション」は、上記のレベルに関係なく片足無意識立ちの修行に役立つものです。


<バリエーション1 日常生活編>
●着替え
一日に5回以上はあるであろう着替えを、できるだけ片足立ちで行います。
足の踏み替えは何度でもOKです。
風呂上がりにバスタオルで体を拭く動作など、複雑な動きの中でバランスを保つのも良い修行になります。
●歯磨き
着替え同様に片足立ちで行います。


<バリエーション2 ストレッチや筋トレとの合わせ技編>
●バランスストレッチ
おしりの後側あたりで、浮かせている足の甲を同じ側の手でつかみます。その状態で腰を曲げて上半身を前に倒してゆき、残りの手の指先で床をタッチします。
楽にできるようになれば、床のできるだけ遠くをタッチするように頑張ってみます。
これによって太もも前面と後面ならびに股関節のストレッチが同時にできますし、頭を下げた難しい体勢でのバランス取りもできるようになります。
腰の悪い方には禁止ですが、日常以外にもウォーミングアップのストレッチに取り入れると、体の活性化に有効です。
●バランススクワット
片足立ちで、できるだけゆっくりとした動作で立ち脚の膝を曲げ伸ばしします。浮かせている足は床に触れない高さに保ちながらつま先まで真っ直ぐ伸ばします。両腕はバランス取りに使い、軽く前方に伸ばします。
上半身は前かがみにならないよう常に起こしておきます。曲げる膝は深く曲げると痛めるので、体重を支えきれる範囲で曲げ伸ばしします。
楽にできるようになれば、伸ばしたつま先ができるだけ前方遠くへ達するように頑張りながら立ち脚の膝を曲げます。上体は頑張るほどに少し後傾します。
ただし頑張りすぎると膝を痛めるので、膝の状態に応じて負荷を調節します。
これによってステアやヒルクライムでの「膝を入れる」という動作で使う筋力を増強し、ステア手前の方向性と上昇力等を向上させます。
<バリエーション3 その他編>
●杭立ち
立っても差し支えのない杭があれば、その上に立ちます。
バランスが難しいので、手足は動かして可。グラグラする杭ならなお効果大。
●傾斜立ち
傾いた場所で片足立ちをすると、同じ場所で「登り」「下り」「左キャンバー」「右キャンバー」の全ての状態が経験できます。これは足裏の感覚もさることながら、傾斜から受ける視覚的な影響への対応力も養えます。
同様に、目の前を通過する電車や自動車の車内を見るのも視覚的な影響への対応力強化に役立ちます。
●その他にも、目をつぶる、かかとを浮かせる、本を読むなど、片足立ち修行のバリエーションは無限です。




片足立ち修行の極意は、片足立ちをしているという意識を無くし、バランス取りを全て無意識下の自動運転に任せ切ってしまうことにあります。


例えばセクションで、「足をつかないようにしよう」と強く意識すればするほど、その意識が無意識の自動運転を邪魔するので、かえって動きがギクシャクして失敗しやすくなります。
なので、むしろ余計なことを考えずに平常心を心がけた方が良い結果につながるのは、その方が無意識下の反応をより多く引き出せるからです。


「意識」と「無意識」の関係は、互いに悪影響し合う事を減らす事により、それぞれがしっかりとパフォーマンスを発揮できるようになります。
初めて取り組む技術は、最初の段階では頭で考え手探りで行うので、ギクシャクして失敗の連続ですが、やがて熟練すると体が動作を覚えて勝手に動くようになります。


一例として「上級者には、自分のできている技術をうまく言葉で説明できない事が結構多い」という事実。
これは「考えながらでもできる動作のレベル」をはるかに超え、「無意識に体が反応している複雑な動作のレベル」がそのほとんどを占めてしまっているため、その動作を言葉するのが難しいという事なのだと思います。


トライアルのテクニックは「無意識の自動運転」へとその動作を磨き上げる事が練習の本質です。
そしてそれ故に「意識」が「無意識の自動運転」を妨げることなく、むしろうまく引き出せるというメンタルスキルの重要性もまた、もう一つの練習の本質として注目する事が大切だと思うのです。


バランスは意識の影響を受けやすい要素です。そのバランストレーニングで無意識の動作を鍛え、意識からの悪影響を切り離す訓練を重ねたら、大会で緊張したときにも実力を発揮しやすい心理状態を保てるようになるのではないでしょうか?
それを信じて片足バランスの修行を今後も続けていきたいなと思っています。